夏は暑いし冬は寒い。洗濯すれば縮むうえに色落ちも激しいので、洗濯機へ入れる場合は他のものと別にしなければいけない・・・
ジーンズの登場から1世紀以上。こんないわば「時代遅れ」で「不完全」な衣服であっても、デニムを愛する人間は今も世界中にあふれています。むしろ不完全であるからこそ愛おしいのかもしれません。
私もいわゆるデニムラバー。10代の頃から私服は100%ジーンズです。現在も約20本のジーンズを順番に穿き込んでいる最中でして。
最大の魅力はやはり経年変化。真っ青で固かったデニムが少しずつ自分の身体にフィットしていく感覚。シワに沿っていつの間にか現れるインディゴのグラデーション・・・
ただ、どんなデニムも同じようにエイジングするわけではなく、それぞれに個性があり、人の好みも様々。
そんな私が考えるジーンズの魅力や、数多あるジーンズから自分好みの一品を選ぶポイントをご紹介します。
今回は前編・後編の2本立てです。後編にはオススメのジーンズを掲載していますので、最後までお付き合い頂ければ。
前回は長々とジーンズ談義で、文章多めのエントリーとなりました。今回はその実践編ということで、写真多めでサクサク進めていこうと思います。前回のエントリーはこちら↓[sitecard subtitle=関連記事 url=[…]
ヴィンテージorレプリカブランド
すべてのジーンズの原点であるLevis501。100年以上の歴史を持つこのプロダクトは、時代とともに変化しています。
つまり同じ501であっても作られた年代でシルエットもディティールも大きく違っています。傑作といわれる50年代のXX(ダブルエックス)モデルをはじめ、40年代のWWⅡ(大戦)モデルや、70年代の66モデルなど、それぞれが特徴的。
ただ、こういったヴィンテージでかつ良いコンディションのものとなると数十万円を超えて取引され、一般人にはとても手を出せる価格ではありません。
そこで約30年前に登場したのが旧ドゥニーム、フルカウント、スタジオダルチザン、エヴィスなどのレプリカブランド。
創成期には、各年代の501をそれぞれの解釈で忠実な再現を試みるのが主流でしたが、その後アメカジブームが終焉を迎えレプリカブランドは501の復刻のみならず、新しい価値のジーンズを提案するようになってきました。
例えばとんでもなく分厚い生地、スキニーに近いほど細身のもの、生地に使われる綿の種類にこだわったもの・・・などなど。それらはクラフトジーンズとも呼ばれ、ヴィンテージに興味の無い層にも受け入れられています。
さて前置きが少々長くなってしまいましたが実は私、完全にクラフトジーンズ派です。
タフなデニムを自分色に染めていく過程を楽しみ育てるのが私のジーンズとの付き合い方なんですよね。
なので多種多様なシルエットや生地の中から「次はどのメーカーにしようか?」「どんな色落ちをするんだろう?」って悩む楽しみがあるクラフトジーンズに惹かれるのかもしれません。
勿論ヴィンテージジーンズを否定するわけではありません。その時代に本当に流通していた事を思うとロマンを感じますし、本物への憧れもあります。
ただヴィンテージ以外を偽者と切り捨てるのはあまりにももったいない。現代には様々なメーカーがあってそれぞれのジーンズ愛が詰まった素晴らしいプロダクトがたくさんあります。
ということで、ここではクラフトジーンズ、レプリカジーンズを中心に「選ぶポイント」「違い」について考えていこうと思います。
ベストは14oz前後!?生地の厚み、オンスの違い
オンス(Oz)とはアメリカ由来の重さの単位です。ただ同じ綿素材を使用しているジーンズでは単純に厚みとほぼ同義と考えて良いでしょう。
市場には10オンス程度の軽い「ライトオンス」といわれるものから、20オンスを超える「へヴィーオンス」とよばれるものまで多種多様に存在しています。
その中で私が考えるベストの厚み、オンスは、ズバリ13.5~15オンス。
ヴィンテージリーバイスでは年代によってバラつきはあるものの、12.5オンス~14オンスの生地が使用されています。
私の好みはそれよりやや厚め。いろいろ理由はあるんですが、実際に穿き込んでみた経験もあって、このぐらいの厚みが色落ちと耐久性のバランスが一番良いと感じています。
デニムは何度も同じ場所にシワがつくことによってその部分のインディゴが剥がれ、白い生地が表れてきます。ジーンズの顔にもなるこのヒゲの出方に大きな差があります。
これは紙を想像すれば分かりやすいかもしれません。折り紙用の薄い紙を折った場合、そのシワはシャープになります。逆に画用紙のような分厚い紙の場合は折り目が丸まってモコモコと判別しにくくなります。
ジーンズの場合、ライトオンスだと折り紙のようにくっきりとヒゲが出る反面、ペンで書いたような不自然で深みのないものになりやすいです。更に耐久性も低いので破れが発生する事も。長く穿くつもりなら耐久性は大事。生地が軽すぎるのはオススメできません。
逆にへヴィーオンスだと自然で迫力のある色落ちになります。ただヒゲはボヤッとしたものになる可能性が高く、くっきりとしたコントラストは期待しづらいですね。以前、16.5オンス生地のジーンズを履き込もうとしましたが、タイトフィットだったこともあり、動きづらいわ膝は痛いわで結局手放してしまいした。
ジーンズは穿きこむことでカッコよくなる特別な衣料品です。穿くこと自体に苦痛があれば経年変化を楽しむほど長く付き合えないでしょう。また、せっかくいい感じに育ってきても、破れなどが原因でお役御免になっては元も子もありません。
しっかりとした耐久性と、穿くことが嫌にならない程度の着心地。購入時に選ぶオンスには個人差はあっても、この2点は抑えておくべきかと思っています。
青っぽいor黒っぽい? 染めの深さの違い
ジーンズのタテ糸(経糸)の染色に使用されるインディゴ。糸の芯を白く残す「ロープ染色」という技法を用いて染色しています。群青色に近いインディゴの色味ですが、メーカーや生地によってその青さには結構な違いがあります。
染めの深さと表現されていますが、ロープ染めの回数により色味が黒に近くなっていきます。
ヴィンテージリーバイスだと、XXモデルは黒っぽく染めが深いといわれますし、66モデルは青身が強いことで有名ですね。
私が所有するジーンズで1番青みが強いのはA.P.C.。逆に黒っぽいのはスタジオダルチザン。並べると違いは一目瞭然です。
どちらが優れているということは無く、好みの問題だと思っていますが、穿き込んだ際の色落ちの方向性には大きな違いがみられます。
青系のジーンズは爽やかな印象。ただヒゲもアタリもないワンウォッシュ状態がのっぺりと感じられることも。
洗濯を極力抑えればバキバキのヒゲを育てる事もできるし、普通に洗濯して自然な色落ちを楽しんだりと、経年変化をコントロールすることもできる「育てる」ジーンズです。
個人的にはボロボロのデニムでかっこよさを感じるのはこういう青系ジーンズが多いように思いますね。
一方、黒系ジーンズは迫力のある経年変化が魅力。ワンウォッシュ状態から様々な服装に馴染み易いので出番も多くなります。また1度や2度の洗濯では色味はほとんど変わらないので、安心して洗濯することが出来ます。
ただ穿き込みが進んでいくと色落ちした部分とインディゴが残った部分のコントラストが強すぎて、小汚くみえることも。
どういったジーンズのエイジングをカッコいいと思うのかは人それぞれ。ただデニムの色味はエイジングの方向性に少なからず影響します。
そのあたりは意識して購入したほうが良い結果になると思っています。
私の場合はジーンズを育て始めた頃は黒っぽいデニムに惹かれていましたが、最近は青系デニムに良さを感じています。年齢のせいもあって自然な雰囲気を楽しめるようになってきたのかも。
とかいいながら、結局はどちらも穿き込んでいるんですけどね笑
どこまでレプリカを求めるか?ディティールの違い
一言で「ディティール」といっても、装飾的な意味合いが強い「赤タブ」や「バックポケットの飾りステッチ」「革パッチ」から、実用的な「セルヴィッジ」「リベット補強」など様々なディティールがあります。
それぞれがリーバイス社の長い歴史の中で積み上げてきた重要で意味のあるもの。
この中で私がこだわるとすれば唯一、セルヴィッジであること。
セルヴィッジであればすべて良い生地だとは言いませんが、やはり旧式のシャトル織機でつくられてこそ、理想的なデニムの色落ちが表現できると思っています。
レプリカジーンズとして評価するとすれば、その再現性を重要視するべきかとも思いますが、クラフトジーンズとして育てるなら、セルヴィッジ以外は単純に好みで選べば良いと思っています。
余談ですが私があまり好きではないディティールは「バックポケットの隠しリベット」。
穿き込んでいくとどうしても破れるんですよね。できればキレイ目にエイジングさせたい私にとっては破れは天敵。とはいえあまりにもメジャーな意匠で、所有するジーンズの半数以上に装備されています・・・泣
綿糸orコアヤーン糸?縫製糸の違い
ジーンズを縫製する糸は黄色、もしくはオレンジ色でしょうか。ただその素材についてはエイジングするジーンズにとって重要な要素です。
縫製糸の素材は大きく分けて綿糸・ポリエステル糸・コアヤーン糸の3つ。
綿糸
ジーンズとともに退色しエイジングする縫製糸です。ヴィンテージジーンズと同じ素材であり、レプリカブランドでも多く採用されています。
強度が弱く、解れやすいのが最大の欠点。それもエイジングの一部として受け入れられるかどうかですね。
ヴィンテージの再現性を求めるならこの糸しかないでしょう。
ポリエステル糸(スパン糸)
安価で大量生産されるジーンズに多く採用される糸です。かなりの強度があり、解れや切れは起こりにくい糸で退色もしません。
なので、デニム生地がエイジングしたときに新品と変わらない色味の縫製糸はアンバランスで、違和感を覚えるはず。
こだわったブランドのジーンズにはほとんど採用されません。
コアヤーン糸
上の2つの素材のハイブリッド糸です。ポリエステル芯の周りに綿で覆ったもので、強度とエイジングを両立しています。
ただこの糸ですべて解決・・・という訳にはいかず、やはり風合いは綿糸には劣りますし、強度はポリエステル糸に劣ります。
これを「いいとこどり」と取るか「どっちつかず」と取るか。
私の場合はポリエステル糸(スパン糸)でなければどっちでも良いかと思っています。そのジーンズの個性と捉えていいかと。
実際コアヤーン糸で縫製されたダルチザンのジーンズは解れもなく「強度が違うなぁ」と感心しますし、綿糸を採用したドゥニームを見れば、切れた糸が良い雰囲気になっています。
まとめ
久々に大好きなジーンズ特集ということで、ちょっと長くなりすぎました笑
今は質の高いレプリカブランドからも現代のファッションシーンにマッチする美しいシルエットのジーンズが続々とリリースされています。
ジーンズに何を求めるかは人それぞれだとは思いますが、2000円あれば買える時代に2万円ほどかけてジーンズを買おうと思う人は、みんなデニムラバーです。
ジーンズ離れが進む昨今、この記事がこちらの世界に飛び込もうとする若者の背中を押す事ができれば御の字です。
オススメジーンズをまとめた後編は近々公開します。それではまた。
☆後編アップしました!コチラからどうぞ↓
前回は長々とジーンズ談義で、文章多めのエントリーとなりました。今回はその実践編ということで、写真多めでサクサク進めていこうと思います。前回のエントリーはこちら↓[sitecard subtitle=関連記事 url=[…]