ファッションも多様化した現代。カジュアルパンツの選択肢も大きく広がっています。
それでも100年以上前から親しまれているジーンズは、形を変えながら今も多くのファンを獲得し続けています。もちろん私もその中の一人。
そんなジーンズの大きな魅力の一つが「色落ち」。
ジーンズは元来、ハードな作業着として作られたタフな衣料品。数年は余裕で穿くことができる一方、染料に使われている合成インディゴは定着力が弱く、水を通すだけで色が落ちるといわれるほど。
しかし、この「丈夫さ」と「色落ち」こそがジーンズの最大の魅力です。何年も穿き続けたデニムは美しい青のグラデーションと、着用者の動きに合わせたシワが付き、いつの間にか特別な相棒へと育っていきます。
最高の色落ちの為に何をするべきか?との問いに多くのデニムマイスター達は「ただ普通に穿き続けること。特別な事は何もしない。」なんてよく言っておりますが…
じゃあ普通って何?
って訳です。
穿けば汚れますし、汚れたら洗濯もします。では、どのぐらいの頻度で洗えばいいのか?洗剤は使っていいのか?乾燥機は使うべきか?…などなど。
このエントリーではジーンズの取り扱い、特に「色落ちと洗濯」について考えていきます。少しでもジーンズファンが増えてくれれば幸いです。
バッキバキ派?のっぺり派?
ジーンズの楽しみ方は人それぞれです。正解なんてありません。
ただ自分の好みをしっかり把握していれば、色落ちの方向性をある程度コントロールすることもできます。
海外スナップにも多い、くっきりとシワやアタリが付いた、「バキバキ派」ジーンズ。
アイテム単体で見たときの迫力は圧倒的です。最初にジーンズを育てようと思ったときに憧れるのはこんな色落ちではないでしょうか。
自分のライフスタイルが刻まれるように色落ちしていく様は「育てる」という楽しみを最大限に感じられます。
一方、ジーンズに興味のない方には不潔に感じられることも…アイテムの主張が強くなりすぎて合わせにくいという欠点もあります。
逆に柔らかくついたヒゲと淡いグラデーションが美しい、いわゆる「のっぺり派」のジーンズ。
先ほどのバキバキ派と比べると清潔感がありますし、淡いインディゴは何にでも合わせられる優等生。実用的でもあります。
ただ一歩間違えると昭和のおじさんルックに。この塩梅が難しいところ。
で、実際に私が育成中のジーンズたちですが…
こんな感じ。バキバキとのっぺりの中間ぐらいですかね。
この色落ちを狙っているわけではなく、洗濯を抑えながら清潔感を保つように穿いていた結果です。自分にとっては自然な色落ちで満足しています。
さて、皆様はどんな色落ちに惹かれるでしょうか?
リジッドからのノリ落とし、ファーストウォッシュ
サンフォライズ加工などの防縮加工がされていない、糊付きの生デニムはファーストウォッシュで2インチ近く縮むこともあります。
なので、穿き込む前に水通し(ファーストウオッシュ)をして糊を落とす必要があります。この時に生地を完全に縮めきっていないと次の洗濯でもう一度縮んでしまい、せっかくのアタリやシワがずれて2重になってしまうことも。
これを防ぐために、ファーストウォッシュで必要なのはまず糊をしっかり落とすこと。それからしっかり乾燥させること。
私のやり方はだいたいこんな感じです。
1,ボタン類を全部留めた状態で裏返す
2,40℃程度のお湯に漬けて軽く動かす(バスタブを使用)
3,約20分~30分後に引き上げて40℃程度のシャワーで残っている糊をしっかり落とす
4,洗濯機で洗いを3分、すすぎは一回、脱水は洗濯機任せ(洗剤なし)
5,セルビッジをしっかり広げて裏向きのまま天日干し
目的が汚れ落としではなく糊を落とすことなので、洗剤を入れる必要はなく、糊が溶けやすいようにお湯を使用しています。同じ理由で生地をこする必要もありません。
と色々書いてはいますが、ぶっちゃけ糊が落ちれば何でもいいわけで…夏場なんかは裏返して洗剤なしの普通洗い×2回でも十分糊落としは可能です。
その後の乾燥は乾燥機で完全に縮めきるという方も多いんですが、私は天日干し派。リスクが少ないですし、乾いたジーンズが自立するのを見るのも楽しみの1つでして笑(15オンスくらいあれば自立します!)
ジーンズは洗濯しよう!
20年ほど前は「ジーンズは洗濯しない」のが当たり前。1年や2年は普通に穿き続ける人もゴロゴロいたとか。
ただ時代もかわり、今では「適度な洗濯」が雑誌やネットでも推奨されています。
そもそもジーンズの素材である綿を含む天然素材は、水を通すと縮む性質があり、その際に伸びた編目が詰まり生地もしっかりする作用もあります。
ですので洗濯を全くしない場合は、適度に水を通した場合と比べ、生地の傷むスピードに大きな違いが出てきます。また汗をかいたまま放置することでバクテリアが繁殖し生地自体が弱くなることもあるそうです。
こういった理由から全く洗濯しないのはやっぱりNG。私もある程度洗濯するようにしています。というか臭くならないようにするには洗濯は必須ですけどね笑。
洗濯の頻度はどれぐらいがベスト?
どのぐらい穿けば洗濯するべきか?というのはかなり個人差があります。ただ穿いている「期間」よりも「時間」で考えたほうがブレが少なくなるのでおすすめです。土日だけしか着用しない人と毎日着用する人とでは月の穿いている時間は雲泥の差になりますし。
あくまで私の場合ですが、冬場は150~200時間、夏場は50~100時間ぐらいを目安にしています。
ただ記録をとっているわけでもないですし、結構アバウト。
もっとバキバキにしたかったら洗濯頻度を減らすようにしますし、自然な感じが欲しかったら回数を増やせばOKです。
洗剤の種類は?量は?
一般的な洗濯用洗剤である、アタックやトップなど蛍光漂白剤入りの洗剤はNGです。全体的に白っぽくなって味気ないジーンズになってしましまいます。
おすすめはアクロンや、エマールなどの中性洗剤。ただそのまま使用すると洗浄力が強すぎるので、私の場合は適量の20%程度しか入れません。しかも洗剤の投入は2~3回に1回だけ。
というのも以前穿き込んだだジーンズは毎回中性洗剤を使用していたんですが、思ったよりも白くなりすぎて安っぽい色落ちになってしまったことがありまして。
なので洗濯をするときは、「汚れを落とす為」のものか、水を通して「生地をシャキッとさせる」のか目的をはっきりさせたほうがいいかもしれませんね。
私は使った事がないんですが、ジーンズ専用洗剤も販売されています。
インディゴは落とさず汚れのみを落とす…と標榜されていますが、どうなんでしょう?個人的には洗浄力の弱い中性洗剤といったイメージ。
とりあえず今のやり方で満足しているので購入する予定はありませんが。
使用する洗剤の量や洗浄力は、インディゴの色落ちへの影響よりも、白い部分をより白くする効果を感じます。
個人的には少しベージュが入ったインディゴのグラデーションの方が、ヴィンテージらしい深みを感じられて好みなので洗剤は少なめ。もっと清潔感のある色落ちを目指すならしっかり洗浄するようにしましょう。
洗濯機に突っ込んで大丈夫?デニム洗濯の方法
手洗い派と洗濯機派、お湯派や水派などさまざまな方法がありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
まず洗濯機を使用する場合、気を付けなければいけないのは生地へのダメージ。何も考えずに回してしまうと思ってもない皴がついてしまうことも。特に叩きつけて洗うドラム式洗濯機は要注意です。
余計な色落ちやアタリが付くのを防ぐためには、ボタンやファスナー類をしっかり止めて、裏返しで洗うのが基本。ただ最近は表洗いを推奨するメーカーもあります。表側が直接擦れ合うことで色落ちが早く、全体がカラッと青くなる印象です。
一方、手洗いは手間がかかるんですよね。何本もある場合は余計にそう感じます。また手洗いの場合はぬるま湯を使うことが多いんですが、お湯を使って洗濯すると汚れもよく落ちますが色落ちの進行も早まります。
ということで、私の場合は裏返して普通に洗濯機に突っ込んでいます。結果的にまったくもって問題なしです。
ただ洗濯機の設定は、洗いを3分、すすぎは一回、脱水は洗濯機任せにして、水に浸かっている時間をできるだけ短く色落ちを最小限に抑えるイメージです。
乾燥方法と色落ちとの関係
綿100%で厚みのあるジーンズは、適当に洗って適当に干しても大きな問題が起こることはありません。ただ干し方によっては色落ちの方向性に違いが出てきます。
基本は「裏返し」て天日干しです。裏返すことで紫外線の影響で色が退色するのを防げますし、生地の重なったポケット部分が早く乾くというメリットもあります。また、肌に直接触れる面を紫外線で殺菌できるので防臭効果も期待できます。
退色を早めるために表向きで干すことを推奨しているメーカーもあります。紫外線を浴びデニムの青色が際立つ自然な色落ちになります。
バキバキ派なら裏返して、のっぺり派なら時々は表向きで干すのもありかと。
自然乾燥とは別に、乾燥機を使用する方法もあります。家庭用のものは温度が低く長時間の乾燥になってしまうのでNG。コインランドリーにある業務用の乾燥機を使いましょう。
乾燥機を使うと生地を一気に最大限まで縮めることになるので、耳とよばれるセルビッジ部分のアタリが出やすくなる傾向があります。(防縮加工がされたジーンズではあまり効果は期待できませんが)
またふわっとした柔らかく穿きやすい質感に仕上がります。生地が柔らかくなれば当然色落ちも、より自然なものになりやすくなります。
ただどうしても乾燥機を使うと生地へのダメージは大きくなりがち。革パッチが硬化して割れてしまったりと、さまざまな問題も起きやすい工程です。
私も一度使用したことがありますが、バスタオルを一緒に入れて余計なアタリを軽減しつつ、20分で一旦ストップして革パッチにクリームを塗布、そのあと更に20分の乾燥…とかなりめんどくさい事をしていた思い出が…
個人的には「限界まで縮めたい」「耳のアタリを出したい」など、明確な目的が無い場合は自然乾燥のほうが無難だと思っています。その方がコストもかかりませんしね笑
まとめ
基本的にジーンズは洗濯の頻度を上げればのっぺり寄りに、強度を上げれば白さが強調されて清潔感が増します。
逆にバキバキにしたければ洗濯の頻度を落とし、ヴィンテージライクなベージュが欲しければ洗濯は水のみなど強度を下げればいいと考えています。
とはいえジーンズはタフなアイテム。1回や2回の洗濯方法の違いで劇的に色落ちが変わってしまうことはありません。あまり神経質になりすぎるのは自由の象徴ともされるジーンズにとって、本末転倒です。
だから楽しみ方も色々あってもちろんOK。洗濯糊をつけたり、シワをつまんでこすったりしてバキバキの色落ちを目指す加工派、「たかがジーパンや」の精神で自然な色落ちを目指すたかが派、リジッド、ワンウォッシュ状態こそ至高という色落ち否定派などなど。
私の場合は理想とする色落ちを求めながらも、途中でどうでもよくなって適当に穿いてたら、いつの間にか良い感じになっていた派…笑 まぁそんな懐の深さもジーンズの魅力。
ぜひ自由にジーンズライフを楽しんでいきましょう!最後は色落ちがお気に入りのリーバイス501ZXXを。それではまた。
最高の色落ちの為にはジーンズの質そのものも大切。ジーンズの選び方はこちら↓
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