どんなにタフなブーツでも別れはやってくるもの。
古着屋で出会って数年。夏場でもガンガン履いてワークブーツらしい付き合い方をしてきたチペワのモックトゥもすでに満身創痍。そろそろ引退させるつもりです。
ただそのまま捨てるのはちょっともったいないですし、ここは一つ、思い切って「スムースレザーのヌバック化」にチャレンジしてみようかと。
無茶は承知ですがダメでもともと。成功すれば儲けものですから。
現在のチペワモックトゥの状態は…
アイリッシュセッターのようなモックトゥのブーツは「ザ・アメカジ」感があって敬遠していましたが、このブーツを履いてガラッと意識が変わりました。ほどなくして本家レッドウィングの9875を購入したのはいい思い出。
淡色系のジーンズとの相性が抜群で意外とシュッとしています。こうやって写真で見るときれいに見えますが…
ヴァンプには無数のクラックが入って、茶色っぽく見える部分もあったり。
側面のチペワマークはボロっと銀面が剥がれ落ちるほど劣化しています。
履き脱ぎでもよく屈曲するバックステイ。遠目にみてもボロボロなのが分かるように。引退を決意したのはこの部分がダメ押しとなりました。
アンダー4000円だったこともあり、手に入れた時点で革はカチカチの状態でした。色々と手は尽くしてきたんですがそろそろ限界のようです。
ヌバック化に必要なものは…
ヌバックレザーとは革の銀面(表層)を均一に削って毛羽立たせたレザーです。
という事は、すでにオイルドレザーとなったこのブーツでも表面を薄く削ってやれば「ヌバック」っぽくなるはず。さらに細かいクラックも一緒に削ってやれば生まれ変わるかも…
そんな淡い期待を込めて、まずはサンドペーパーを用意しました。
左から#120、#240、#600の三種類。数字が大きくなるにつれて目が細かくなっていきます。
まずは#120でザクっと削って、少しずつ目の細かいモノで仕上げていく予定。
さて、いきますか…
オリャー!
一番気になっていた側面とバックステイから削りました。銀面をガシガシ削るというのは何というか、背徳感がありますね。もう引き返せません。
勢いあまってステッチまで削らないように注意しないと。靴としての機能すら失いかねませんから。
削って削って…これぞヌバック!?
右足が削り終わりました。所要時間は約1時間ほど。一つ言えることは「これ、メチャクチャ疲れます」。
何だかスゴイ色になってますが大丈夫なんでしょうか。
さて休憩を挟みながらもう片側もやってしまいます。
ジャン!
#600のサンドペーパーまでかけ終わりました。
表面はサラサラ。色味は黒とベージュが混じったような独特な風合いになっています。ちなみにここまで休憩を挟みながら3時間以上経過しています…はぁ~シンド。
側面のインディアンマーク。遠目で見る限りクラックはほとんどわかりません。おぉ、成功の臭いが漂ってきました。
一番の問題点だったバックステイ。結構しつこく削ったおかげでかなり目立たなくなっています。ただ少し削り過ぎたようでサラッとした質感にはならず。
いやぁ面白いカラーになりました。削りカスがすごいのでしっかり掃除したほうが良さそうです。
染め直しも考えていたんですがそれも必要なさそうで、むしろこのままのカラーをキープしたい…ということでこれにて完成!
・
…とはいきません。今回の加工でかなりダメージを負ったであろうチペワブーツ。しっかりケアもしてあげようと思います。
しかしこの決断が仇になるとは。
さらにタフなブーツへ…ワックス加工を敢行!
オイルを入れるかクリームを塗るか…色々選択肢はあるんですが、ガンガン履けるタフさを優先して、ワックス加工で仕上げることにしました。
ヌバックレザーにワックス加工するのは今回で2回目。
前回はレッドウィングの8190でしたが、その仕上がりがかなり良かったので今回も期待大です。
丸洗いから一週間たった中古レッドウィング8190。前回の丸洗い編エントリーはこちら↓[sitecard subtitle=関連記事 url= https://ramshiruba.com/8190_roughtough_wa[…]
使用するのはもちろんコレ。
コロニルのアクティブレザーワックス。
アウトドアブーツ用なんですが、固形のものとは違い常温でも柔らかいテクスチャーでワックス割れとは無縁です。それでいてしっかり撥水性も得られますし、ツヤ感もぐっと上がるという便利なやつです。
まずはレザーに水分をしっかり含ませますが、削りたての面白いカラーがみるみる黒くなっていきます。
しっかり水分を吸って粘土みたいな質感になったレザーに、ワックスを塗り込みます。
手の平で何度もグイグイ押し込むイメージ。
1回目が完了しました。思ったより黒さが戻ってしまいましたがこのまま乾燥させてどうなるか、ですね。
で、このまま1週間。
2回目も同様の工程を経て完了。8190と同じようにワックスを2度塗りしました。このままさらに1週間乾燥させます。
加工終了!結果は…
足かけ2週間、しっかり乾燥させたーツを室内に運びました。
マットな質感。色は完全に黒が戻ってしまいましたね…
化繊ブラシと馬毛ブラシで擦っていくと…
ジャン!!
完成です。いやぁ、この黒々としたツヤ…
ん?・・・
・
いや、元に戻っとるやないかーい!!!
腕がパンパンになったあの3時間は一体…泣
ヴァンプは削った割にはまぁまぁクラックも残っていたり
側面に至ってはちょっと酷くなった気までします。
削りまくったバックステイはご覧の通り崩壊したまま。銀面は通り越したのかザラっとした肌触りに。
結局一周回って元通り、問題点は何も解決しないというアホみたいな結果に。
かといって、もう一度3時間かけて削り直す気力はさすがに湧きません。
とりあえず履いてみました
たしかに劇的な変化はないんですが、実際に履いてみると少し印象が違います。
真上から見ると、右足には黒が戻っていない部分もあったり、やっぱり全体的にも質感の違いは感じますね。
1枚ベールを剝いだような透明感というか、元々の革質が現れた気がします。
正面からはこの通り。微妙な変化は写真ではわかりにくいですが。
まとめ
ワックス加工を実施したせいで、ほぼほぼ元に戻ってしまった今回の実験的なエントリー。
「ヌバック化」という当初の目的からすれば、正直失敗といえる出来ですね笑。
ただ多少銀面をヤスリがけしても元に戻ったのは良い経験になりました。しつこいシミなんかは同じ方法でリフレッシュできるかも…そういうのもいつかやってみたいなぁ。
このブーツも時間と気力がたっぷりある日に削り直そうと思います!
それではまた。