見た目も似ていて比較される事が多い、ベックマンと1000マイル。丈は同じ6インチハイト。爪先はシンプルなプレーントゥ。どちらのブーツもメーカーでは「クラシックドレス」という位置づけです。
確かに共通点も多いですが、明確な違いもあります。その違いが個性を生み、それぞれが多くの人に支持される事につながっています。
今回は両者の違いに焦点を当てたいと思います。
私が所有しているものは
wolverine 1000mile boot rust(赤茶)、redwing 9014 beckman(黒)。
「鋼のように頑強なソールとアッパー。シルクのような柔らかな履き心地」「1000マイル歩いても壊れない。疲れない」ブーツ好きには超有名なこのキャッチフレーズは、通称センマイとも呼ばれるWolverine 1000mile bootの特[…]
ワークブーツファンのみならず、世界中のアメカジファンを魅了するRedwing。その中で群を抜いてドレス色が強いブーツがベックマンです。名前の由来は創業者チャールズ・ベックマン。その名前を冠したベックマンブーツは今ではRedw[…]
写真左にベックマン、右に1000マイルです。
アッパー、皮革の違い、経年変化について
1000マイルに採用されているのはホーウィン社クロムエクセルレザー。アメリカの名門タンナーであるホーウィン社の代表的なレザーです。
油分を多く含みモチモチした質感で、足馴染みは驚く程早いです。100年前には手法が確立されていたとされる、歴史の深さもこのレザーがスペシャルだという証拠でしょう。
ベックマンに採用されているのはフェザーストーンレザー。自社タンナリーである「S.B.FOOT」により開発されたプレミアムレザー。登場は2005年で比較的新しいレザーですね。
ベックマン発売当初はアッパーにクロムエクセルレザーが採用されていました。それに代わるレザーとして開発されたことからフェザーストーンレザーの目指した方向性が分かります。クロムエクセルレザーの傷つきやすいという弱点を克服し、強靭さとしなやかさを両立させたとされています。
さて、このような出自から似たような革かと思いきや両者はまったく異なったキャラクターを持っています。
しなやかさは圧倒的にクロムエクセル、1000マイルですね。引っ張れば伸びるほどのやわらかさ。足馴染みのよさも納得です。
強靭さとの両立を目指したベックマンはやや硬め。オイリーさをほとんど感じないドレスシューズのような艶感です。ブーツらしい硬さで安心感もありますが、履き慣らしは必要でしょう。
原皮の美しさはベックマンが有利ですね。1000マイルには血筋やトラ、同じ靴の中で質感の違いが見られる・・・など正直、あまりいい印象はありません。銀面のなめらかさ・厚さのムラ・しなやかさなどを厳選した上位5%のみ使用されたフェザーストーン、ベックマンはさすがの質感です。
シワの付き方、エイジングにも大きな違いがあります。上の写真、くるぶし下あたりをご覧頂ければ分かりやすいかと。ベックマンは小さなシワが密集するように変化しています。
一方1000マイルはツルッとしていて形状だけが変化しています。全くシワがないわけではないんですが、ベックマンほど多くありません。また、シワとは違う色味の濃淡が出てきています。
この特徴はヴァンプ(甲)の部分でも見られます。
茶と黒の色の違いも大きいかと思いますが、個人的にはクロムエクセル、1000マイルの経年変化が大好きですね。ただし、写真の反対側の足(左足)の外側のみシワシワです。この品質のばらつきをどう捉えるかですね・・・
シルエットの違い
真上から撮影してみました。
木型はベックマンがやや内振りが強いように見えます。さらにベックマンは絞り込みがはっきりして、グラマラスな印象。
一般的には履き心地が向上するとも言われるラストの振りですが、私の場合、小指が微妙に当たるんですよね…
あとはコバの張り出しが違いますね。ベックマンの方が大きく張り出しています。
実際に履いてみると少し違った印象になります。
1000マイルは柔らかいアッパーが足の形に沿うことで美しいドレスライクな顔立ちに。
一方ベックマンは強靭なアッパーがその形状を保つことでワークブーツ然としたイメージを保持します。
個人的にも、履いたときと単品のときで印象が違うのは意外で、面白い発見でした。
そのほかのディティールの違い
バックショットで比べてみます。
ミッドソールに直接、厚めのラバーヒールが装着されたベックマン。
ミッドソールの上に革の積み上げを行って、ラバーのトップリフトを装着した1000マイル。
履き口にパイピング処理されたベックマン。1000マイルは革を当てて縫製されています。
どちらもワーク寄りのベックマン、ドレス寄りの1000マイル、という個人的な印象を強くさせます。
1000マイルのハトメの上部3箇所はフックになったクイックシューレース仕様。これはフックの内側の金属が靴のタンを痛めることもあり、賛否が分かれますね。
ソールの違い、履き心地の違い
前から見た印象は大きく違います。
ベックマンの前部分には、ブロック状に切れ込みの入ったラグソール風のラバーが装着されています。厚みもしっかりしており堅牢さを感じます。
対して1000マイルはシンプルなシングルレザー。(私のものは薄いラバーを後付しています)ドレッシーな見た目ですが反面、強度的には不安がありますね。
実用的なベックマン。ドレッシーさを求めるなら1000マイルといったところでしょうか。
このソールの違いが履き心地に与える影響はとても小さいと思っています。
シングルレザーの1000マイルはやはり返りが良いと感じます。ただベックマンのソールもラバーが張られているのは前側のみなので返りが悪いようには感じません。
もっとも違いがあるのはアッパーの柔らかさだと思います。
ベックマンには硬さがあるため馴染むまでに多少の痛みも出ることがあります。1000マイルはアッパーの柔らかさゆえ、高いフィット感があり、足に吸い付くような履き心地。
トータルでの履き心地は、やはり1000マイルに軍配があがりますね。
サイズ感の違いについて
私の足のサイズは 足長:255mm 足囲:243mm 足幅98mm 。
ベックマン、1000マイルとも、US7.5/Dを履いています。足長、ワイズについては全く同じといって良いかもしれません。
違いは甲の高さ。ベックマンの方が薄いインソール分ほど高く感じます。「ベックマンは1000マイルよりハーフサイズあげるべき」という意見も耳にしたことがあります。それはおそらく、足長やワイズの問題ではなく甲の高さがあわず、足が前に突っ込んでいた状態ではないかと推測しています。
私の実体験ですが購入当初、小指に痛みを感じていたベックマンにインソールを入れることで、ジャストのサイズ感となって痛みもなくなりました。同じような方はぜひ試してみてください。
まとめーライフスタイルによるお勧め度ー
ここまで2つのブーツを比較してきましたが、どちらも間違いなくいいブーツです。ただどちらにも弱点があって、長所もあります。
そこでライフスタイルや使用頻度を基準に検討することをオススメします。
それぞれを着用したイメージで。
1つのブーツだけで完結したい、どこにでも履いて行きたい、ガシガシ履く予定の方。
絶対ベックマンがおすすめです。1000マイルとは比較にならない程の堅牢さ、メンテを繰り返すうちに次第に現れる美しい艶。ヒールラバーと前部分に貼られたラバーは、それぞれ交換可能で、経済的にも大きなメリットです。
履くのは週末のみ、綺麗に履きたいがエイジングも楽しみたい。チョコチョコ履く予定の方。
これは1000マイルの出番です。履き慣らしの必要がないほど足馴染みの良いアッパーと、迫力のある経年変化。ドレスライクな顔と男っぽい色気は、履き始めてすぐに実感できます。
結論、どちらもオススメ笑。ではまた!