「Redwingに始まり、Redwingに戻る」
日本のワークブーツファンにとって最も身近な存在であり、最初に履いたのはRedwingだという人も多いはず。
そこからどんどんブーツ沼にハマり、様々なブーツブランドを知ることになります。
もっと堅牢でタフなもの、華やかでスマートなもの、仕事が丁寧な日本製のもの・・・
で、ふと気づくんですよね。
「あれ?結局Redwingばっかり履いてるやん」
それは値段と丈夫さのバランスだったり、キズや履きシワのカッコ良さだったり。
人によって理由は違うとは思いますが、例の格言を良く思い出す今日この頃です。
さて、今回は初めて他人のブーツをメンテします。
先日実家に帰った際に、2つ年上の兄がかなりヤレた8165を履いているのを見かけまして…
ここは私が、ちょっと一肌脱いでやろうと立ち上がったわけです。
初体験の8165の魅力とエイジング
かなり古くから存在している定番モデル「8165」ですが、こうしてじっくり手に取って観察するのは初めてかも。
黒いアッパーにシルバーのハトメとフック。
シンプルで汎用性の高いビジュアルで、どんなコーデにも馴染んでくれそうな安心感がありますね。
アッパーには芯まで黒く染められた「ブラッククローム」という定番の革が使われています。
塗膜が厚く、艶感が強いイメージ、なんですが…
トゥはここまで剥げて完全にツヤが無くなっています。
数年前に中古で購入したらしいのですが、一回もメンテしたことが無いとのこと。
う~ん。腕が鳴ります。
シームレスな1枚革を使った後ろ姿。
バックステイの無い見た目はやはりシンプル。アメカジ色が出過ぎないスマートさが魅力的です。
かかと部分の擦り傷もなかなか。
性格の違いなのか、我が家のブーツ達とは明らかにエイジングの方向性が違いますね笑
数年ぶりのクリーニング
いつものようにシューレースを外して馬毛ブラシでホコリ落としです。
レースステイの裏も数年ぶりのわりにはそれほどホコリは無く、ちょっと期待外れ。
お次はクリーナーを使って全体をクリーニング。
「Mモウブレイ / ステインリムーバー」
まぁ、身内と言っても私のブーツではないですから、無理はできません。
バランスの良い洗浄力を持ちつつ革にやさしい、このクリーナーなら安心です。
って…
カッサカサ過ぎん??
これはあまり強く擦ると大変なことになりそうです。できるだけ軽く、表面の汚れを取り除くだけにします。
クリーム仕上げ!ブラッククロームに油分は浸透する?
思っていたより深刻な油分不足だった8165。
ただ塗膜が厚いブラッククロームには油分が浸透しにくいという話も聞きますし…
とりあえずいつもの。
「Mモウブレイ デリケートクリーム」
まずはコイツで革本来の柔軟性を復活させます。うまく入ってくれればいいんですが…
いやいや、めっちゃ吸い込むやん・・・
実は塗膜が邪魔をしてクリームを弾くことも予想していたんですが、良い意味で裏切ってくれました。
これは長い年月をかけたエイジングの賜物でしょう。比較的ツヤが残るサイド部分にはやはり浸透しづらいように感じました。
豚毛ブラシで全体をマッサージするように擦っていきます。
この時点でかなり艶が復活している様子。これは完成に期待が持てますね。
仕上げはコイツ。
「Saphir / クレム1925」
しっかりと油分を吸収させたい。
強めの補色効果で美しい黒色の復活を。
ブラッククロームらしい艶感に・・・
と、今回の狙いにピッタリのクリームです。
指で直接塗っていきますが、触った感じでは、革はかなりのダメージを蓄積させています。クラックもチラホラ。
一度クラックが起こると元に戻すことは不可能ですから、完璧な仕上がりとはいかなそうですね。
ま、そんなエイジングもRedwingらしくて、カッコ良いんです。
化繊ブラシで全体に馴染ませると同時に栄養分を内部に押し込んでいきます。
この時点で明らかにツヤが増していくのが分かります。楽しい~!!
ただ、この日は屋外でやったんですが、真夏は外でやるもんじゃないですね。汗ダラダラ。
数分待って、浸透しきれなかったクリームをネル生地のウエスで拭き取って、靴紐を通すと・・・
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メンテ完了!仕上がりは…?
8165のクレム仕上げ、完成です!
しっかり履き込まれた迫力はそのままに、黒はより黒く、嫌味のない程度にツヤも復活。
これなら兄も満足してくれるでしょう。
剥げ上がっていたトゥもこの通り。
新品のツルっとした質感とは違う、エイジングを経た深みのある黒ブーツになりました。
バックショット。
ここも補色の効果を感じます。
余計な装飾も無く黒一色。綺麗目なコーデにも使えそうなほどスタイリッシュです。
こっそりと勝手に履いてみました笑
木型No.8でUS7.5Dと普段の私がタイト目に履くサイズと同じなんですが、全体的に余裕があって羽根も閉じ気味。
これは製造時期によるものなのか、履き込んだ効果なのか…
硬いと聞いていた革の質感も全く気になりません。
その日私が履いていたポストマンと並べてみました。
単純なツヤはポストマンの方が上ですが、ブラッククロームは革の内部からにじみ出るような黒です。
皴の出方もワークブーツらしく自然で…うん。相当カッコ良いですね。
これまでブラッククロームは表情が出にくいイメージがあって敬遠していたんですが、エイジング次第でこれだけ変化するんですね。認識がひっくり返りました。・・・これはアリです!
まとめ
初めての他人のブーツ。初めてのブラッククローム。
今回のメンテで一気にこの革を採用したブーツに興味が湧いてきました。
もともと私は自他ともに認める「定番好き」。
定番には時代を超える魅力があると信じていますが、それはこのブラッククロームも同じ。ぜひ育ててみたいレザーになりました。
8165はもちろん、8133スーパーソールやエンジニアにも採用されてますからね~。これは迷います。
次に買うブーツを考える、そんな時間も楽しいもんです。それではまた。